契約書の作成を専門家に依頼すると、法令に適合した契約書を用意してもらうことができます。
契約実務の世界には、「
契約自由の原則」という考え方があります。
(契約自由の原則については、
「契約自由の原則」(当事務所運営サイト「契約書の達人」内)をご覧下さい。)
特に、企業間の取引は、企業と消費者との契約に比べて、より自由度が高い、つまり、それだけ当事者間の合意(=契約)が、法律に優先する傾向が強いです。
そのため、契約書の作成の際には、とかく法令の存在を軽視しがちです。
ところが、現実の実務では、契約書と法令というのは、極めて密接に関係しています。
このような事情に精通していない者が契約書を用意してしまった場合、その契約書は、違法なものである可能性があります。
契約書に関わる代表的な法令としては、
独占禁止法が挙げられます。
独占禁止法は、正確には、「
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」といいます。
独占禁止法は、ほとんどの企業間の取引に適用される可能性がある法律です。
従いまして、企業間の取引についての契約書を作成する場合、専門家は、必ずと言っていいほど、取引内容が独占禁止法に違反していないかどうかを検討します。
また、独占禁止法ほど広範囲に適用されるものではないものの、同様に契約書に関わる法令として、
下請法が挙げられます。
下請法は、正確には、「
下請代金支払遅延等防止法」といいます。
下請法は、下請取引全般に適用される可能性がある法律です。
ひと言で「下請取引」と言っても、極めて範囲が広いため、大企業と中小企業との取引、特に、一般的に「業務委託契約」と呼ばれる取引には、まず適用されるものと考えてもいいでしょう。
このような取引の場合は、専門家は、取引内容が下請法に違反していないかどうかを検討します。
上記の2つの法令は、企業間の取引について適用される法令ですが、企業と消費者との取引についても、さまざまな法令が適用されます。
代表的なものは、いわゆる「
クーリングオフ」について規定されている「
特定商取引法」や、企業と消費者との契約全般を規制している「
消費者契約法」などがあります。
また、特定の業界の取引について規制している、いわゆる「
業法」などによって、契約書についての規制がかけられている場合もあります。
例えば、建設業法第19条(建設業)、宅建業法第37条(宅建業)、貸金業法第17条(貸金業)、探偵業法第8条第2項(探偵業)、社会福祉法第77条(社会福祉事業)、会員契約適正化法第5条第2項(ゴルフ場会員権事業)などが挙げられます。
(以上の契約については、詳しくは、拙著『
これだけは知っておきたい契約書の基本知識とつくり方』の巻末付録を参照のこと。)
このほかにも、検討するべき法令が、多数存在します。
ですから、契約書を用意する際には、形だけ気軽に揃える、というようなことは、あってはならないことです。
ビジネスで契約書を用意する以上は、法令に違反しないようにしなければなりません。
法令に違反した契約書を用意していると、場合によっては、罰則を受けることになりかねません。
特に、
なんらかの許認可を得ておこなっているようなビジネスであれば、最悪の場合、監督官庁から、営業停止処分や許認可の取消しなどということにもなりかねません。
この点、契約書を専門家が用意する場合は、法令を調べたうえで作成することになりますので、法令違反のリスクは少なくなります。
ですから、契約書を用意する場合は、少なくとも、専門家によるチェックを受けるか、または専門家に用意してもらうべきです。